2025.01.16
住宅の断熱材は何がいい?グラスウールも正しく施工すればすごくいい!
こんにちは!
ワダハウジングの纐纈です。
弊社では住宅の壁と天井の断熱材に高性能グラスウールを使用しています。
なぜ、グラスウール何ですか?とよく聞かれます。
これには理由があります。
目次
グラスウールは性能とコストのバランスがいい
住宅に使う断熱材は性能とコストのバランスが重要ではないかと考えています。
というのも全てを満たす最高の断熱材は存在しません。
そして、どの断熱材にも長所と短所があります。
当前ながら、正しく施工をしないと断熱材が断熱の力を発揮してくれません。
よって各会社ごとに得意、不得意があり断熱材の種類や施工方法が違ってきます。
上記でも書きましたが、弊社は住宅に使う断熱材は性能とコストのバランスが重要ではないかと考えています。
よって性能とコストを比較して断熱材を決めました。
断熱材には熱伝導率という数値が大きいほど熱が伝わりやすく、数値が小さいほど熱が伝わりにくい数値があります。
この熱伝導率の数値を断熱材の厚みで割ることで熱貫流率が求められます。
熱貫流率とは「壁の両側の温度を1℃としたとき、1時間あたり1㎡を通過する熱量」のことで、熱の通りやすさを示す数値のことです。
熱伝導率は材料自体の数値であるのに対して、熱貫流 率はその材料の厚さも加味しています。
熱伝導率も数値が小さい方が熱を通しにくいことになります。
例えば弊社がよく使用する高性能グラスウールの場合
熱伝導率0.038W/mk ÷ 断熱材の厚み0.105m(105㎜)=熱貫流率0.3619…W/㎡k
となります。
弊社が床や基礎で使用する押出法ポリスチレンフォームの場合
熱伝導率0.022W/mk ÷ 断熱材の厚み0.05m(50㎜)=熱貫流率0.44W/㎡k
ここで熱貫流率が小さいからよいわけではなく、同じ面積を断熱材で覆った場合の値段も比べないといけません。
高性能グラスウールの場合2,270円/㎡
押出法ポリスチレンフォームの場合3,864円/㎡
1㎡当たりで比べてみると高性能グラスウールの方が、性能もよく価格も安いことが分かります。
あくまで、上記の価格は定価ベースの話です。
実際には各会社毎に得意、不得意があり仕入れの値段が変わってきます。
更に職人の施工手間も加味して決めています。
そんな理由から壁と天井の断熱材は高性能グラスウールを使用しています。
ただし、床、基礎、屋根断熱の場合は施工性と厚みがあまりとれないことから、薄くても断熱性能が確保しやすい押出法ポリスチレンフォームやフェノールフォームといった断熱材を使います。
特に施工性の部分が大きな要素を占めます。
施工のしやすさで職人の手間がかなり変わってきます。
つまり適材適所で断熱材を使い分けることで施工性、性能、価格のバランスがとれてくる分けです。
グラウウールの特徴
グラスウールには主に3つの特徴があります。
①無機質系のガラスをリサイクルした環境配慮の断熱材
原料は主にリサイクルガラスになります。
おおよそ80~85%ぐらいのメーカーが多いと思います。
家庭などから回収されるガラスやガラス瓶なども含まれており、地球環境の保護と資源の有効活用につながる材料です。
ちなみに、使用済みのグラスウールも再生利用可能だそうです。
グラスウールの製造時に出る端材や、施工時に出る端材、リフォームやリノベーション時の取り壊しや解体作業などで不要になったものでも再生処理して再利用できるそうです。
グラスウールは繰り返し利用できるので、環境保護やゴミの減量に役立つ断熱材として、グリーン購入法に特定調達品目に該当しているほどです。
(グリーン購入法とは国などによる物品購入時には環境に配慮した製品を購入すべきと定めた法律)
②環境や経年による変化が少なくいので、長い年月性能が落ちない
断熱材の中には、温度や湿度で変形を起こしてしまうものもあります。
グラスウールはガラスが主原料のため、シロアリの食害もほとんどなく、変形や劣化に強いことから断熱性能が長続きすると言われています。
木造住宅の骨組みである木材も年数が経過すると木材から水分が抜けて、収縮し隙間ができてしまうことがあります。
グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材は伸縮性があるため、木材が収縮した場合でもカバーすることができます。
又、温度や湿度の影響を受けにくいため、年月が経過しても形や断熱性能が変化することがほとんどないのも特徴です。
※硝子繊維協会の「検証 壁の中のグラスウール」より、施工後26年経過しても経年変化は少なかったことが報告されているそうです。
※建産協の断熱リフォーム体験記において、築25年の住宅から回収したグラスウールの物性を測定した結果でも、熱伝導率の劣化は無かったことが報告されているそうです。
③火災時に高温になってもガスや有害物質を発生しない安全な素材
グラスウールは不燃性のため万一の火災の際も燃えにくく、延焼や類焼を防ぎやすいので逃げる時間を確保しやすいのも特徴です。
不燃材料として、平成12年建設省告示第1400号「不燃材料を定める件」で、コンクリートやレンガ等と同様にグラスウールも認められています。
長い時間高温になっても溶解したり変形することがないので、万一の火災の場合にも燃えにくく、延焼や類焼を防ぎ有害ガスや黒煙を発生させるようなこともありません。
不燃性燃焼試験では、グラスウールは焦げるものの燃焼はせずに大きな変化は見られなかったそうです。
それでは、火災発生の際の健康への影響はどうでしょうか?
原料のガラス繊維は、高温になってもガスや有害物質を発生させることはありません。
しかし、ガラス繊維同士を接着するバインダーと呼ばれる接着剤には、微量の有機物が含まれているそうで、火災時の環境によってはガスが発生することがあります。
ただし、グラスウール断熱材に含まれるフェノール樹脂の量はとても少ないため、ガスが発生したとしても人に悪影響はないものと考えらています。
グラスウールの誤解
①グラスウール断熱材は身体に悪そうなイメージ
同じ繊維形状のため発がん性のある天然鉱物繊維のアスベストと混同されることがあります。
グラスウールはガラスが主原料の人工繊維であり、アスベストとは全く別物です。
これまでグラスウール断熱材にアスベストが含まれたことは一度もないと各メーカーがうたっています。
グラスウール断熱材は構造の柱と柱や柱と間柱に充填することが一般的です。
よってガラス繊維が室内や室外の空気を汚すことはありません。
仮にわずかに飛散している繊維を吸い込んだとしても、グラスウールの繊維は直径4~9ミクロンと太いため、鼻や気管支でほとんどが除去されるそうです。
万が一肺に入ったとしても、体液に溶けやすいので短期間で体外に排出されるので安心です。
「IARC」(国際がん研究機関)による物質の発がん性評価では、グラスウールは「グループ3」の「ヒトに対して発がん性が分類されない」に該当するものと認定されています。
これは「グループ2B」のコーヒーよりも危険のないレベルになります。
グラスウールは世界中で50年以上も安全に使用されており、製造・施工現場の実態調査でも問題ないことが確認されています。
②ホルムアルデヒドはどうなの?
その他にも、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドにも安心です。
合板や塗料、接着剤などに比べグラスウールから発生するホルムアルデヒドの量はかなり少ないです。
「ホルムアルデヒド等級※」でも最高ランクの「F☆☆☆☆」に該当しているので、建築基準法における使用制限がなく使用できます。
※ホルムアルデヒドの発散量によりF☆☆~F☆☆☆☆までの等級に区分されています。
その等級によって室内で使用できる面積など制限があり、☆の数が多いほど安全性が高くなります。
グラスウールの悪いうわさ
グラスウールが壁からずり落ちてしまわないか心配される方がみえます。
NETに写真が出ているのは、 20年以上前の袋に入ったグラスウールが流行していた時代の写真がほとんどです。
施工が悪ければどんな断熱材でもずり落ちたり、隙間が出たりしてしまいます。
断熱や防湿の技術が確立していなかった頃や、内外温度差が厳しい北海道や東北地域での事例がほとんどです。
古いもの、改良前の物などと比較して誤った情報が多いのが事実です。
その他にグラウウールにカビが生えると心配される方もみえます。
グラスウールは、繊維と繊維の間に空気を含んでいます。
周囲の湿度に合わせて断熱材内に湿気が出たり入ったりしますが、ガラス繊維自体は吸湿性がない無機質材料のため、素材自体が湿気を吸うことはありません。
断熱材に隙間があったり防湿が不十分だったりすると、湿気が壁などに侵入して内部結露が発生してしまいます。
これを繰り返すことでカビが生えてしまいます。
グラスウールで断熱をする場合は、室内側に水蒸気の侵入を防ぐ防湿シートを設置することが基本になります。
その他に外壁と構造躯体との間に通気層という空気が通る層を設置します。
継ぎ目などから湿気が壁の中に入っても、通気層で湿気を排出することができます。
住宅の断熱化が一般的になり、断熱材の施工技術が向上した現在では、防湿シートの施工や湿気を排出する通気層工法などが確立、普及していますので、正しく施工されたグラスウールにカビが発生することはないのでご安心ください。
グラスウールの施工
そうは言ってもグラスウールの施工には技術が必要になります。
誤った施工をすると施工不良になりかねません。
特に、柱と柱、柱と間柱の間に充填する場合、筋交いやコンセントボックスなど断熱材を詰める際に障害物になります。
この部分で施工の精度にバラツキが出ることがあります。
これは、施工方法の理解と充填断熱の仕方を理解すれば難しい作業ではありません。
施工する方に、正しい知識と正確な施工技術を身に付けるためにセミナーや勉強会でに参加して、学ぶ必要があります。
そんな事から、グラスウールは施工技術があるのか、ないのかの判断基準にもなると思います。
グラウウールの選び方
グラスウールにも種類が沢山あります。
どのグラスウールで施工をするのか選び方にも注意が必要です。
最初から防湿層という袋に入ったグラスウールとグラスウールを詰め込んだ後に防湿シートを貼る裸のグラスウールがあります。
結論から言うと裸のグラスウールの方がおススメです。
おススメな理由は
①施工不良を防ぎやすい
②気密がとりやすい
③結露を防ぎやすい
袋入りグラスウールの方が安価ですが、正しく施工をするのが非常に大変で、職人さんの手間代が高くなりがちです。
最初から防湿層がついているので、スイッチやコンセントなどがあると防湿層を剥して戻すなど作業工程が多くなり、施工不良を起こしやすいです。
防湿層がつながるように施工するのが非常に難しいので、気密がとりにくいので、結露のリスクが高くなります。
そのような理由から裸のグラウウールに防湿シートを貼るほうが施工が楽で、しっかり断熱と気密が確保できるからです。
その他に、グラスウールには通常のグラスウールと高性能グラスウール2種類があります。
通常のグラスウールは繊維の径が7~8μmですが、高性能グラスウールは繊維を細くしたタイプで5~6μm程度・4~5μm程度・3~4μm程度の3種類ほどあります。
繊維をより細くすることで、容積あたりの繊維本数が増え、繊維同士で形成された動かない空気の大きさが小さく、かつ増えることで性能が高くなります。
更に密度もあります。
密度が増えるに従ってグラスウールの中の空気がより細かくなるので、断熱性能が良くなります。
高性能グラスウールや高密度のグラスウールの中からコストと性能と施工性のバランスを見つけるのが非常に難しいです。
高性能かつ高密度になれば性能は良くなりますが、コストが掛かります。
特に高密度のグラスウールは施工のしやすさにも影響があります。
密度が薄いと施工しにくいですし、高密度になりすぎても施工がしにくい。
ワダハウジングでは何を使っているの?
弊社ではコストと性能と施工性のバランスから「高性能グラスウール16K」をよく使用しています。
断熱する場所や狙いたい性能に合わせるので必ず「高性能グラスウール16K」とは限りませんが…
弊社は自然素材をなるべく多様したいことから、グラスウールも「マグ・イゾベール」社の製品を使うことが多いです。
グラスウールは繊維同士をバインダーと呼ばれる接着剤で接着して形がつくられています。
一般のグラスウールの場合、接着剤にフェノール系樹脂などの石油化学物質系が使われていることが多いです。
そんな中で、マグ・イゾベール社は植物由来のバインダーを使用しているので環境配慮がされています。
そんなところも良く使う理由の一つです。
まとめ
どんな断熱材でも正しく施工をしないと夏涼しく冬暖かい住宅になりません。
断熱材そのものよりも、施工会社によって得意、不得意や何を基準に決めているかが大事になります。
完璧な断熱材はありませんので、各会社の断熱材に対する想いなどを聞いてみると良いと思います。
目次
ワダハウジング和田製材株式会社
・一級建築士
・一級建築施工管理技士
・一般社団法人みんなの住宅研究所会員(会員番号:200019)
纐纈和正