2023.11.01
ワダハウジングの纐纈です。
住宅には暖房費を安くする方法があります。
1.住宅をできる限り真南に向ける
2.隣家からなるべく離して日当たりをよくする
3.南面の窓を構造が許す限りなるべく大きく、多くする
こうすることで、冬の日当りがよくなり室温が高くなるので暖房をつける時間が減らせます。
冬だけで考えれば正解ですが、夏の場合はそんな簡単ではありません。
(時期的に冬が近づいていますが…大事な事なので…)
ほとんどの人は身体に対する太陽の日差しの威力を知っていると思います。
同じ服装で同じ場所にいても、太陽の日差しがあたるか、日陰なのかで決定的に冬の暖かさが違います。
夏も同様で暑さが全く違います。
冬は太陽の日が当たる場所に行きたくなり、夏は日陰に入りたくなりますよね。
これは、住宅の中にいても同じです。
簡単に説明するとビニールハウスをイメージしていただくとわかりやすいと思います。
イチゴ狩りなどで、ビニールハウスに入るとめちゃくちゃ暖かい!と感じると思います。
(イチゴ狩りでなくてもOKです)
太陽の日差しを数値で説明すると…
上記のような幅1.6m高さ2mの引き違いの窓。
一般の住宅でよくある大きさです。
この窓に太陽の日差しがしっかり当たると…
少し難しい計算をします。
条件(冬の正午を想定)
・窓の大きさ1.6m×2m=3.2㎡
・窓のU値(温度差1℃・面積1㎡の時に、何ワット(W)の熱を伝えるかを表した指標)2.0W/㎡・K
・ガラスの日射取得率60%
・住宅の室温20℃
・外気温5℃
・外気熱量1月の場合約100kWh/㎡・月=約3.3kWh/㎡・日=1日10時間の日当り3.3/10h=330W/㎡
輻射熱=330W/㎡×日射取得率60%=198W/㎡
伝導熱=窓のU値2.0W/㎡・K×住宅内外温度差(20-5)=30W/㎡
熱の収支=(198-30)W/㎡×窓の大きさ3.2㎡=537.6W(10時間の平均)
その熱量はおよそ540W!
540Wの熱量に近い暖房器具が…
こたつです。
こたつ1台はおおよそ600Wの熱量があります。
断熱性能と気密性能が高い住宅なら、冬でも600W近い熱があれば6畳の部屋が暖房無しでも20℃を超えます!
しかし、夏の場合はどうでしょう?
またもや、少し難しい計算をします。
条件(夏の正午を想定)
・窓の大きさ1.6m×2m=3.2㎡
・窓のU値(温度差1℃・面積1㎡の時に、何ワット(W)の熱を伝えるかを表した指標)2.0W/㎡・K
・ガラスの日射取得率60%
・住宅の室温27℃
・外気温35℃
・外気熱量8月の12時の場合約300W/㎡
輻射熱=300W/㎡×日射取得率60%=180W/㎡
伝導熱=窓のU値2.0W/㎡・K×住宅内外温度差(35-27)=16W/㎡
熱の収支=(180+16)W/㎡×窓の大きさ3.2㎡=627.2W
その熱量はおよそ630W
12時頃の1時間だけでこれだけの熱量が室内に入ってくることになります。
これだけの熱が入ってくると冷房をつけっぱなしにするしかありません。
電気代が非常に高くなります。
それだけでなく、不快感や健康を害する事にもつながりかねません。
夏は日差しを遮る工夫が必要になります。
そうしないと「冬は暖かいけど夏は暑くてたまらない」住宅になってしまいます。
冬の日差しを取り込むのは簡単には出来ません。
(隣地の住宅やビルなどの周りの建物の影響をうけるので…)
ここが設計の腕の見せ所になります!
東西北面では、可能な限り窓を小さくします。
各方位に1ヶ所が目安です。
面積は0.5㎡以内が理想的です。
窓から侵入する熱量を60W以下(こたつの熱量1/10以下)に抑えるには窓の面積をどれぐらいにしたらよいかを計算します。
またもや少し難しい計算をします。
条件(夏の10時頃の東面を想定)
・ガラスの日射取得率40%(遮熱型)
・外気熱量8月の10時の場合約300W/㎡
熱量60W÷日射取得率40%÷外気熱量300W/㎡=0.5㎡
ちょうど0.5㎡になります。
この計算によって窓の面積を0.5㎡以内としています。
又、遮熱型のガラスを使い日差しを遮ります。
遮熱型のガラスの日射取得率は約40%、断熱型のガラスの日射取得率は約60%このぐらいの取得率が日本の窓メーカーでは一番多い値なのでこの%を用いて計算をしています。
余談ですが、弊社が標準としている窓はもっと日射取得率が低い(約28%)を採用しています。
又、北面にも遮熱型ガラスを使用していることにも理由があります。
日の出から日の入りまでの時間と方位角が分かる、方位角倍率という図で判断をしています。
冬至は日の出7:03から日の入り16:53の9時間53分(上記の冬の熱量計算で10時間を想定したのは冬至の9時間53分が元になっています)
春秋分は日の出5:48から日の入り17:54の12時間6分の日があります。
夏至は日の出4:46から日の入り19:16の14時間30分も日があります。
さらにいうと、方位角で冬至は120度しか日が当たらないのに対して、夏至は240度も日が当たり続けます。
240度もあると北面の窓にも夏の暑い西日が16時~19時の3時間も当たるので遮熱型ガラスにした方がよいと判断できます。
反対に南面では、可能な限り窓を大きくします。
断熱型のガラスを使い日差しを取り込みます。
窓とガラスでかなり変わります。
南の窓は可能な限り窓を大きくすると、上記で計算した夏の12時からの1時間で630Wの熱が入り込むことになります。
そこで熱が入るのを防ぐ効果があるのが庇です。
岐阜県の場合、夏の日差しは78°(夏至)の角度からおりてきます。
冬の日差しは31°(冬至)の角度です。
庇があると夏は日差しを防ぐことができます。
冬は庇があっても日差しを取り入れることができます。
絵だけでは説得力が低いので計算もします。
条件(夏の正午を想定)
・窓の大きさ1.6m×2m=3.2㎡
・窓のU値(温度差1℃・面積1㎡の時に、何ワット(W)の熱を伝えるかを表した指標)2.0W/㎡・K
・ガラスの日射取得率60%
・住宅の室温27℃
・外気温35℃
・外気熱量8月の12時の場合約300W/㎡
輻射熱=庇があるので直射日光は無いが、20%の輻射熱の移動あると想定300W/㎡×日射取得率60%×20%=36W/㎡
伝導熱=窓のU値2.0W/㎡・K×住宅内外温度差(35-27)=16W/㎡
熱の収支=(36+16)W/㎡×窓の大きさ3.2㎡=166.4W
その熱量はおよそ166.4Wしか入ってきません。
庇無し627.2W
庇あり166.4W
庇があるかないかで460.8Wの熱量を防ぐことができます。
(上記計算は住宅が真南を向いていることを想定しているので、真南からズレればズレるほど住宅内に侵入する熱量は増えます)
ただし、庇の長さが短いとこの計算通りにいきません。
夏の78°という角度から計算すると、窓1mに対して庇は30㎝の10:3の比率が必要になります。
2mの窓なら庇は60㎝ないと角度的に防ぐことはできません。
又、3月と9月(春秋分)は庇では日差しを遮ることが難しいです。
というのも太陽の日射角度は1ヶ月でおおよそ7.8°ほど高度を下げます。
3月と9月は太陽の日射角度が54°ほどになり日が入ってきます。
庇を長くすれば良いのではと思うでしょうが、上記の方位角倍率でいうと180度日が当たるので、長くしても防ぐことができません。
又、庇を長くすると冬の日射取得量にも影響するので、あまり長すぎるのも問題があります。
3月と9月に太陽の日差しを防ぐのに有効なのが外付けシェードです。
上記の図で分かってもらえると思いますが、窓の内側で日差しを防ぐと4割ぐらいしか防げませんが、窓の外なら8割ぐらい日差しを防げます。
これは住宅内に熱が入る前に防ぐか、入った熱を窓から住宅内に伝わるのを防ぐかの違いによるものです。
取付をする位置でここまで大きな差がでます。
この4割と8割という値は(一財)建築環境・省エネルギー機構「温暖地版 自立循環型住宅への設計ガイドラインーエネルギー消費 50%削減を目指す住宅設計」から用いています。
室内で日差しを防ぐものとしては、カーテンやブラインドなどです。
外で日ざしを防ぐものは、外付けシェードやよしず、すだれなどのことを指します。
外付けシェードは上記のようなものです。
操作が簡単、BOX内にシェードが収納できるので片付けが楽な優れモノです。
南面の窓だけでなく東西北面の窓にも使うことができます。
このような外付けシェードを利用すれば、東西北面の窓を0.5㎡以内としなくても大丈夫です。
ただし、部屋が暑くなる前にしっかり降ろしておくことが大事になります。
又、窓の開き方によっては取付しても操作ができない場合があります。
縦すべり出し窓や横すべり出し窓などの外に向かって開く窓は、住宅内側から操作ができませんので注意が必要です。
更に夏だけでなく、冬にも効果が少しですがあります。
太陽の日差しが無くなったら下ろしておくと、外の冷気が住宅内に伝わるのを和らげる効果があります。
夜の一番冷え込む冷気を少し防ぐことができる一石二鳥のアイテムです。
(ちなみにシャッターや雨戸も日があたらなくなったら閉めておくと、外付けシェード以上の効果が得られます)
ただし、台風などの強風時は風で飛ばされてしまうので、使用を控えてください。
実物は弊社の事務所に設置がしてあるので、ぜひご覧ください。
私たちの考える理想的な住宅は、冬の日差しを取り込み、夏の日差しを遮る住宅だと思っています。
もちろんデザインも大切です。
ずっと暮らす住宅がカッコが悪いのはあまりいい気分ではないですし…
しかし、冬の日差しを取り込み、夏の日差しを遮る住宅は生活していく方の冷暖房費を必ず安くすることができます。
なので、私たち設計する側が配慮してあげないといけません。
デザインありきではなく、性能つまり暮らしていく方の冷暖房費などのランニングコストを下げた設計をした上で、カッコよくなるようにデザインを整えていく。
このような設計をする順番を大事にしています。
1.夏はどんな時間も日差しを入れない!
2.冬は日中の日差しを取り込む!
これで「冬暖かい!夏涼しい!」住宅になります。
ワダハウジング和田製材株式会社
・一級建築士
・一級建築施工管理技士
・省エネ建築診断士(エキスパート)
・住宅外皮マイスター
・既存住宅状況調査技術者
・一般社団法人みんなの住宅研究所会員(会員番号:200019)
纐纈和正
家づくりは人生のうち一度あるかどうか。
どんな家がいいか、お金のこと、土地のことなど、わからないことだらけなのが当たり前です。
みなさん同じです。そういった場合は、まず専門家に聞きましょう。
ご来店またはホームページ、インスタDMなど、
お客様の使いやすい方法でご質問ください。
私たち住まいのプロが、お客様の疑問や不安に正直にお答えいたします。
しつこい営業は致しませんので、その点もご安心ください。
家を考え出す時は、まずは、イメージやデザインから興味を持たれる方が大半です。
しかし、家はイメージだけで決めてはいけません。
健康に快適な毎日を過ごすための確かな品質があってこそのものです。
健康で豊かな暮らしができる家を建てる為に、知ってて良かったと言われる知識を盛り込んだ資料をプレゼントいたします。
お一組様1回限り、毎月5名様限定。
※プレゼントは、岐阜県土岐市・瑞浪市・多治見市・可児市・可児郡で建築予定の方に限らせていただきます。
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